教員も学校の外に出てみよう。生徒に還元できる体験ができるはず

「HatchEduは自分の殻を破ることができるプログラム。 生徒たちに還元できる取り組みも生まれました。」大山 紘平さん(HatchEdu – 2020参加者)

HatchEduは、教育領域で起業やプロボノ(ボランティア)支援をしたい人が集まるコミュニティとして、2020年からスタートしました。1期プログラムの参加者はHatchEduから何を得たのでしょうか?
教育団体を支援するプロボノコース(Bコース)に、現役の学校教員としての経験を生かして参加した大山紘平さんにお話を伺いました。

プロフィール
名前:大山 紘平
職業・所属:私立中高一貫校 社会科教員
仕事のスタイル:自分がわくわくしたことをやりたい。やりたいことをやる
最近読んで面白かった本:「教えるということ」(出口治明)
先生をするなら:(今教えている世界史でなければ)総合学習。リベラルアーツ的な視点からものごとを考えていくような探究学習をやっていきたい。また、探究学習を手段としたキャリア教育に興味がある。
学校をつくるなら:生徒が輝ける中学校・高校
小さい頃何になりたかったか:最初は医者、その後教師

Contents

いつも「学校教育を面白くしよう」と話し合っている同僚と一緒に参加


ー HatchEduへの参加のきっかけを教えてください

大学院を卒業して、中高一貫校である公文国際学園に就職して4年目になります。今は高校生に世界史を教えています。小学校6年生の頃、激務に耐える父の姿を見ていて「40-50年働くのであれば、絶対に自分が楽しいと思える仕事につきたい」と思い、それが教師でした。「楽しくなくなったら辞める」と生徒にも言っています。幸い、学校の中には、「学校をどうやってよくしていけるだろうか」と普段から話し合える関係の同僚がいて、いろいろな情報交換をしながら楽しく仕事をしています。

コロナの影響で教員向けのオンライン研修が多く開催されるようになり、気になったものには手当たり次第参加していました。そんな中、学校の同僚が教えてくれたHatchEduのキックオフイベントに参加。それまでアントレプレナーの方とお会いする機会はなかったし、大きなビジョンと目的意識を持ってチャレンジしている方々の話を聞いて、「こんな世界があるんだ!」とワクワクしました。

一方で、不安感もありました。アントレプレナーやコンサルタントの人たちとは全然違う世界で仕事をしているので、自分はお門違いではないだろうか、と。でも、できなくてもいいかなって。わからないことは「わからない」と言えばいいし、何かしら吸収できるものがあればいいなと思って振り切り、同僚と一緒に応募しました。

取り組んだのは教師向けサービスの企画


ー どんなプロジェクトに取り組みましたか?

Bコースに参加したので、Life is Tech! の既存プロジェクトのお手伝いをするのかと思っていたのですが、結果的には、Aコースのようにゼロからサービスを考えるというプロジェクトになりました。その体験ができたことはすごくよかったですね。

プロジェクトのお題は、「先生たちが月に1,000円払ってでも入りたくなるコミュニティをつくる」というものでした。メンターの綿谷さんからは、「自分が絶対欲しいもの、『自分だったら1,000円払ってでも絶対入る』と思えるものじゃないと事業として成立しない」と言われました。教員それぞれが「1,000円払ってでも入りたいもの」って何だろうかと。

ー 具体的にはどんなアイデアが出てきたんですか?

チームの先生から出てきたのが「17時に退校できるんだったら入ります」というアイデア。「たしかに!」とみんな頷いて。そして、17時に帰れていない現状があるのなら、仕事をどういうふうに効率化したり、なくしたりすれば帰れるのかという観点から考えました。

自分自身、朝7時半から夜遅くまで学校にいるような働き方をしていて、部活動の指導もあります。もうちょっとゆとりができれば違うことも勉強できるし、余白を作れるような働き方ができたらいいなと思っていました。

ー このテーマに取り組んだことで得られたものは?

「目的があれば働き方も変えられる」とわかったことが大きな収穫です。まず業務の洗い出しをして、「働き方を見直し、子どもたちのために自分が勉強する時間をとれるよう、余白をつくりたい」という問題意識をみんなでまず共有できた。その上で「実際に17時に帰ることができるかやってみでください」と言われたので、僕がやりますと手を挙げ、夏休み明けから、実際に17時帰りをやってみました。そうしたら、意外と帰れちゃったんです。実際には家で仕事したりとかっていうことはあったんですが。

そして、いろんなことを議論する中で「17時に帰る」ということ自体は目的ではなくて、それによって実現したい世界は何かということを突き詰めていくと、教師が仕事や暮らしの中で充実感を感じている姿なのではないかと。そこから「ボトムアップ型で教師が自信を持てるコミュニティをつくろう」ということになりました。

ー プロボノ経験から、どんな学びがありましたか?

プロジェクトでは宿題も毎週あり、他の先生とZoomで時間を合わせて2人で宿題をしたりと、週次のチームミーティング以外にも週2時間くらい使っていたと思います。でも負担感や苦労はまったくなく、ミーティングも毎回すごく楽しみでした。

僕たちを楽しく、やる気を持たせてくれるようなメンターの水野さん、綿谷さんのファシリテーションから学ぶことがとても多く、満足感が高かったです。方向性は示されますが、基本的には任せてもらえる。水野さんは大きなビジョンで引っ張り、綿谷さんは現実的に、論理的にしっかり整理していくという組み合わせ。

チームメンバーはお互いに言いたいことを言い、プロジェクトマネージャーの役割を務めてくださった佐野さんがスプレッドシートを使ってまとめて下さる中、Life is Tech! 側の水野さん、綿谷さんが気になったことや大事なことについてメンタリングをしてくれているという感じでした。学校以外の、ビジネスセクターの方とのプロジェクトが大きな学びを与えてくれました。

大山さんたのチームが考えた事業案のプレゼン。HatchEdu1期の最終プレゼンでトップ賞を受賞した。

他の参加者とのコラボで、自校の生徒へのメンタリングが実現

ー プロジェクト以外で良かったことは?

Aコースの参加者やBコースの他のプロジェクトの参加者とも交流できたことです。教員ではない参加者の方々から、「学校現場の話を聞かせてほしい」という連絡をいただきました。「学校の先生は社会のことを知らない」という課題感は持っていたし、外からそう見られている部分もあると思います。でも、社会の側も学校の中のことを知っているわけではない。

HatchEduコミュニティの中に「学校を知りたい」という需要があって、それに応えて話をしていたら学校を良くしようと思っている方がすごく大勢いらっしゃることを知りました。自分が教員として学校に身をおいてきたからわかることがあって、それを他の方々にも還元できるのは嬉しいことでした。

ー 交流を通して生まれたことは?

Aコース参加者の高塚さんから学校の現状についてインタビューを受けた時、高塚さんのやろうとしていることと、学校側の課題感が一致し、うちの学校で高塚さんのプロジェクトのプロトタイプを実施してもらうことになりました。具体的には、総合的な学習の時間に生徒たちが個人でリサーチをして論文を書くにあたり、「こういうことについて知りたい、調べたい」ということに対して大学院生の方がアドバイスし、生徒の探究の過程をしっかりサポートしてもらうというものです。(詳細は高塚さんの記事)。

生徒に参加を呼びかけたら学年165人のうち35人が応募し、実際に繋げられたのは19人。生徒のプロジェクトにきめ細かなフィードバックをしてくれたり、「自分の行動目標を持ってみたら」といったアドバイスもしてくれたり、で生徒の満足度はすごく高いです。

学校としても、探究学習を進めるにはこうした取り組みが必要だという認識を持つようになり、卒業生にも協力してもらって希望する生徒全員にメンターがつけられるといいねというアイデアも出ています。また、他のAコース参加者の方の団体とつながったことで、海外大学で受けるような授業を生徒に体験してもらおうという取り組みも実現し始めています。HatchEduでのつながりで得たものを生徒たちにも還元できていることが嬉しいです。

参加しての満足感はとても高い。迷ったら即行動を!


ー 参加を考えている方へのアドバイスはありますか?

僕たちのプロジェクトは「教員が自信を持てるようなコミュニティをつくりたい」という結論になりましたが、HatchEduそのものが、自分の殻を破ることができ、自己肯定感・有用感が高まるプログラムだと思っています。

最初は、すごく忙しくなるんじゃないか、本業に支障が出るのではないかとかという不安もありましたし、3ヶ月という期間も長いんじゃないかと思っていましたが、一瞬でした!今は、もっと長くていいのにと思っているぐらい。

なので、迷ったらやってみたほうがいいと思います。やっていけるかなという不安はありましたが、実際にやってみるとその満足度はすごく高かったです。迷ったらやってみたらよいと思います。思い立ったら即、行動を!

ー 今回のHatchEduの参加経験を、学校現場でどう生かしたいと思っていますか?

HatchEduで自分が学んだことをもっと生徒に還元したいと思っています。例えば、課題解決の研修でふれた思考のフレームワーク。子どもたちも同じようなプロセスやフレームワークを使うことはできると思うし、様々な場面で使えるスキルになります。それから、キャリアセッションで学んだコーチングのモデル。教員をやっているとそういうことを学ぶ機会もなく、コーチングを体験してみて初めて「質問をすることがこんなに難しいのか」と。

僕は、知識をただ享受していく授業には違和感を持っています。世界史の知識がなかったからといって大人になって困ることはそんなにない。本当に興味をもったときに勉強できるのが今の世の中です。だから、HatchEduの研修で学んだような「実社会に転用可能なスキル」を使いながら世界史を勉強していく方が、子どもたちにとって有用なんじゃないかと思っています。

今回HatchEduに参加して、子どもたちに伝えたり考えてもらえたりすることは無限にあるなと思いました。自分の世界が狭かったことも感じたし、教育に関わりたいと考えている方がたくさんいることも知りました。HatchEduに限らず、「学校は学校」「企業は企業」ではなく、混ざり合うような教育ってすごく大事だと思います。教育セクターのアントレプレナーを育てていきたいというときに、教員がそのアントレプレナーシップをサポートして、「うちの学校でやってみましょうよ」っていうことがもっと起きてくると、すごく面白いですよね。
外部のリソースで使えるものは使って、これからできることを考えていきたいです。そして、このHatchEduでのつながりを終わらせないで、日本の教育に良い影響を与えたいと思っています!

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文:江森 真矢子
取材協力:升野 頌子

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