教育事業の立ち上げ、「計画よりまず行動してみること」で得られたもの

実践すると100倍学べる。入学前に自分でプロジェクトを立ち上げる経験ができ、本当に良かったです。ー高塚 景さん(HatchEdu – 2020参加者)

HatchEduは、「教育で起業したい人」「教育をプロボノ支援したい人」が集まるコミュニティとして、2020年からスタート。
今回は、HatchEdu1期の教育領域での起業の種を支援するコース(Aコース)に参加した、高塚景さんにお話を伺いました。高塚さんは、経営コンサルティングファームで4年半の実務経験を積んだ後、MBA取得を目指してハーバード・ビジネス・スクールに進学。HatchEduには、ボストンに住みながらリモートで参加しました。

プロフィール名前:高塚 景
職業・所属:外資系経営コンサルティングファームを経て、現在はハーバード・ビジネス・スクールの1年生
仕事のスタイル:チームワーク重視
学校をつくるなら:グローバルな学校
好きな本:「シン・ニホン」
子供の頃の夢:舞台女優

Contents

「まず始めてみよう」と背中を押してくれるプログラム

ー HatchEduに応募された動機を教えて下さい。

経営コンサルタントとして働き2年半ほどたった頃からキャリアの次のステップについて考えるようになりました。いろいろな社会課題、解決すべき課題がある中で、自分が昔から問題意識を強く持っていて、かつ、関わっていきたいと思える領域は教育だなと。

そこで、教育セクターのいろいろな方とネットワークをつくり、プロボノでのお手伝いなども始めていましたが、「自分がオーナーとしてプロジェクトを動かしてみたい」という思いがありました。ただ、具体的なアクションは起こせていないままいたところ、HatchEduのことを知り、「アクションをとるきっかけになるかもしれない」と思ったことが応募のきっかけです。

ー なぜHatchEduであれば一歩踏み出せると思ったのですか?

一番大きかったのは、HatchEduでは「必ず起業しないといけない」というプレッシャーがなく、「まず始めてみること」自体を支援するプログラムだったことです。他のプログラムでは、数ヶ月後に起業や事業登録をすることがゴールとして設定されていることが多く、少し重荷に感じました。そこまでのコミットメントをする前に、まずはアクションを起こしてどれくらいの手応えがあるかを確認してみたいと思ったのです。

また、HatchEduでは、「初めの一歩」を支援するプログラムであるにも関わらず、最初から教育セクターのトップランナーやベンチャーキャピタルなどのプロフェッショナルがメンターについてくれることにも魅力を感じました。そして、「メンタリングを本人の意思とペースに合わせた形で活用してください」というスタンスだったので、すごくよい機会だと感じました。

プロトタイプから手応えを感じ、具体的な課題も見えた

ー プロジェクトについて教えてください。

私は長野県伊那市の出身で、小中高と公立学校に通いました。田舎で、私学に行く等の選択肢もない環境でしたが、幸運にもとても情熱的な先生に出会うことができ、生物学に興味をもち、大学では脳神経科学を専攻して修士まで進みました。ただ、周りを見ると、自分は例外的で、地方では純粋な好奇心に突き動かされた学びができる環境に出会えている人は少ないということを知りました。また、地方にいると「生物学を勉強してどんな仕事につけるんだろう」ということもイメージしづらく、ガイドしてくれる大人も周りにいないということに気づく機会もありました。

そうであれば、今はデジタルでどこにいても誰とでも繋がれる環境があるのだから、地方の中高生が大学生からプロジェクト学習(以下PBL=Project Based Learning)のメンタリングをしてもらうことを通じて、幅広いロールモデルに出会うきっかけがつくれたらいいなと思いました。特に、自分が理系を専攻してきたということもあり、高校生がSTEM領域のPBLにおいて、大学生がメンターとして支援してくれるプロジェクトを構想しました。

ー どのようなプロトタイプを行ったのですか?

私立中高一貫校でのプロトタイプを実施させていただきました。具体的には、その学校で高校1年生の必須カとなっている個別PBLのカリキュラムの中に、大学生によるメンタリングのプログラムを組み込んでもらいました。
まずメンター集めを行い、すでに自分の研究やプロジェクトなどを開始している理系の大学生、大学院生を中心に8名のメンターを集め、メンター1人に対して高校生を2人ずつマッチングしました。

高校生が各々のプロジェクトのテーマを決めた後は、1ヶ月間にわたって週に1回のペースでZoomでのメンタリングを実施。高校生は最後に論文を書きました。Slackも有効活用し、高校生は論文を書くためのアドバイスなどもSlack上でメンターに相談していました。毎回のセッション後にアンケートを書いてもらうことで、効果検証のためのデータをとりました。


ー 高校生はどんなプロジェクトに取り組んでいましたか?

テーマは本当に幅広く、「植物を育てるときに、悪口を言い続けた場合と感謝を口にしながら育てた場合で、生育が変わるのか」「安楽死が認められると自殺率は下がるか」など、切り口もユニークでした。高校生は、メンターのアドバイスのもと「仮説を立て、観察して、検証する」「実験群と対照群を設ける」等、科学的アプローチの基本をおさえながらプロジェクトを進めていました。また、高度な機械などがないながらも、携帯電話のアプリを使ってデータを取る等の工夫もしていました。

私自身もメンターを務めましたが、理系の大学院生だったころに実験室で行ってきたことを元にアドバイスできました。また、私自身も、最前線の科学者ですらも、まだ答えを持っていないようなことについて、高校生と一緒にインターネットを検索しながら論文を見たり、その学年の教科書の範囲を超えて関心を掘り下げたりすることができました。

ー 高校生の反応はいかがでしたか?

参加した高校生からは、プロジェクトの悩みを率直に話せただけでなく、メンターの大学での研究の話や進路選択の話が聞けたこともすごく楽しかったという声や、「考え方が変わりました!」という感想もありました。また、メンターによっては、「なぜ自分はこのテーマに選んだのか?」という問いを通じて自分の根源的な興味を探るための支援まで深めてくれたこともありました。1ヶ月という短期間ではあったけれど、プロジェクト学習のみならず、高校生たちの価値形成や今後の進路選択についてもインパクトを出すことができたという感覚を得ることができました。

ー プロトタイプを実施したことでどのような学びがありましたか?

プロジェクトを進める上で、先生のエンゲージメントの大切さに改めて気づきました。当初は、メンターと生徒の関係構築に主眼をおいていましたが、生徒は先生のことを信頼しているので、外から入る私達が先生からの信頼を得ていること、私達が提供するものが先生からも推奨されるようなものであることが重要だと学びました。そして受け入れてくださった先生の目的意識と、私達のメンタリングの方向性を合わせていくことが高校生をエンゲージする上でも非常に大事だと感じました。

また、当初は大学生・大学院生メンターに対してゴール設定をあまり明確にしていなかったのですが、プロトタイプを走らせながら、メンター自身のゴール設定をしっかり行い、「メンタリングを通じて高校生にどうなってもらいたいか」「メンターとしての自分自身はどう成長したいか」といった目標について意識合わせをしておくことがモチベーション維持の観点からも大事であると学びました。

メンターや参加者仲間の支援でプロジェクトが前進

ー HatchEduに参加して、どんなことがよかったですか?

やはりメンタリング・セッションです。メンターとの毎回のミーティングでは、ずっと自分がもやもやして誰にも発信できなかったことを言葉にしてみて、それに対してプロフェッショナルな人たちからフィードバックをもらえるということだけでもわくわくしました。自分で何も進まなかったと思っても、「これは前進だよね」と言ってもらえて気づくことも多かったので、すごく励みになりました。

実は、当初は「3ヶ月で事業計画をつくり、プロトタイプの準備までできたら十分」と思っていたのですが、メンターの方のアドバイスで、計画を精緻化するよりも、まずはプロトタイプを走らせてみることになりました。結果、これがすごくよかったです。計画ではなく行動を優先したからこそ、動いてみて初めて分かるような、細々としたことや想定していなかったことに悩み、向き合うことができました。メンターと常に連絡を取れるプログラム期間中にプロトタイプを開始し、リアルタイムで具体的なアドバイスを得ながら前に進められたことは非常に大きかったです。

ー HatchEduのコミュニティについてはいかがでしたか?

参加者同士が繋がることのできるイベントを通じて、「事業を立ち上げる手前」という自分と似たステージにいる、悩みを共有できる仲間ができました。ほっとする環境を得られました。

また、HatchEduで意欲ある先生と出会えたからこそ、その先生(大山先生)のご勤務校でプロトタイプを実施することができ、この出会いが大きな財産になりました。先生に声をかけたら、すぐ「やりましょう。」と言ってくださって、しかもその週のうちに学校から許可をとってきてくださったんです。私が考えていたプロトタイプは、学校のご協力が不可欠なものでしたが、私がひとりで学校に突然連絡し、依頼していたら、きっとうまくいかなったと思います。また、HatchEduAコース参加者の髙島さんも大学生メンターのひとりとして活躍してくれました。このHatchEduのコミュニティの中でできる繋がりはすごく大きいと思います!

大山先生の記事はこちら

「自分の殻を破って前に進みたい人」にはぜひ参加してみてほしい

ー HatchEduに参加してみて、アントレプレナーシップについての気づきは何かありましたか?

HatchEduでの今回のプロジェクトが、初めて自分がオーナーシップをもって動いて、自分で何かをやってみたという経験でした。そして、動いてみたからこそ、「こんなことをやりたい!」「やれる!」と思っていたことが、実はものすごく遠い世界で、自分ができるアクション一つ一つは本当に小さなインパクトしかないからこそ、アクションを積み重ねていかないといけないという感覚を得られました。ひとつの学校で8人のメンターにメンタリングしてもらうだけで、実はこんなに大変なんだ、と。やはり自分が目指しているインパクトを起こすにあたって、どれだけの人を巻き込んで、どれだけたくさんアクションしないといけないかというところで自分の中での感覚値を持つことができたのはすごく大きかったです。

また、数字上のインパクトを口で語るだけではなくて、そのインパクトを出すために自分がどれだけ時間的投資とエネルギー的投資をする必要があるかがリアルにイメージできるようになりました。実は、アントレプレナーシップに関しては、まだ基礎しか学んでいないビジネススクールの4ヶ月よりも、3ヶ月のHatchEduを通した実践の方が100倍学んだと感じました。入学前に自分でプロジェクトを立ち上げる経験ができ、本当に良かったです。

ー これから応募を考えている方へのアドバイスがあればお願いします。

「HatchEduの他に、あなたのアクションをサポートしてくれるものがありますか?」と考えたとき、具体的な答えがないのであれば、応募した方がいいと思います。別の選択肢がなく、HatchEduに参加しなければ一人の殻に閉じこもるのであれば、その殻を破るためにまず応募してみてほしいです。

「殻を破る」という段階でサポートを得たいという人には最適なプログラムだと思うので、自分のモヤモヤしているアイデアを形にしたい、具体的なアクションに移したいという方には、ぜひ応募していただきたいなと思います。

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