「教育×プロボノ」体験を通じてキャリアの棚卸し。自分らしい教育への関わり方も見い出せた

「自分が今持っているスキルで、教育に貢献できそうだ」ということがクリアになりました。

ー佐野 晴美さん(HatchEdu – 2020参加者)

HatchEduは、教育領域で起業やプロボノ(ボランティア)支援をしたい人のためのコミュニティとして、2020年からスタートしました。1期プログラムの参加者はHatchEduから何を得たのでしょうか?教育団体を支援するプロボノコース(Bコース)に民間企業での経験を生かして参加した佐野晴美さんにお話を伺いました。

プロフィール
名前:佐野 晴美
職業・所属:通信系企業で法人向けサービス企画を担当
仕事のスタイル:生産性重視。時間内に終わらせる
好きな本:「モモ」(ミヒャエル・エンデ)
先生をするなら: かつては「困難校で九九も苦手」という中学生に数学を教えたいと思っていました
学校をつくるなら: 今なら、「吹きこぼれ」の子がイキイキできるプログラムをつくりたいです

Contents

憧れていた教職。教育との関わり方を模索していた

ー 民間企業で働きながら、教育に関わろうと思ったのはなぜですか?

「いつか教員に」という思いはずっと持っていました。母が教員をしていたこともあり、幼い頃から教員になることが夢で、大学では数学の教員免許を取りました。また、通っていた高校には民間企業での勤務経験のある先生が多くて、私も「一度社会を見てから教員になろう」と思い、通信系の企業に就職しました。

変化の激しい業界であることと、女性にとっての働きやすさを基準に選んだ会社ですが、いざ仕事を始めてみたらとても楽しく、今の仕事は自分にあっているんだなと思っています。ただ、「どこかで教育に関わりたい」という気持ちはあり、「今の自分で教育セクターに貢献できることがあれば」と思っていました。

ー HatchEduへの応募のきっかけは?

実は、プロボノに参加するのは2回目です。育休のママ向けのプロボノ活動に参加したことがあったので、「プロボノというスタイルも教育に関わる最初のきっかけとしていいな」と思い、5月のHatchEduのキックオフイベントに参加しました。イベントに登壇した、株式会社リタリコの長谷川さんの事業にはもともと興味を持っていました。

イベントでは、若い世代が起業家として活躍していることに親近感を抱き、「これからの教育セクター、すごく楽しそうだな」という印象を受けました。また、教育系のイベントはちょっと敷居の高さも感じていたのですが、HatchEduは「どんなバックグラウンドの人でも歓迎」ということで、参加しやすかったです。起業志望の人だけでなく、一般企業に勤務しながら教育のプロジェクトを経験できるというところも、他にはないユニークさだと思いました。

ただ、新卒で就職した会社にずっといて、職務履歴書を書いたことがなく、自分のスキルの棚卸しもできていないという不安もありました。コンサル業界系の錚々たるメンターの方々を見て「箸にも棒にもかからないのでは…」と思いながら、おそるおそる応募しました。

先生たちと一緒にサービスを立ち上げるプロジェクトに参加

ー 関わったプロジェクトについて教えてください

Life is Tech! の教員向けサービスを立ち上げるプロジェクトに参加し、プロジェクト・マネジメントを担当しました。Life is Tech! のことは応募するまで知らなかったのですが、大学時代にプログラミングをしていましたし、システム・エンジニアやサービス企画の経験があったので、プロジェクト・マネジメントならばできるかなと思い、応募しました。
このプロジェクトにHatchEduのBコースから参加した私以外のチームメンバー7名のうち、6名は現役教員の方でした。Life is Tech!からは、CEOである水野さんと、同社のコンサルタントを務めていてHatchEduのメンターでもある綿谷さんが参加されていました。

プロジェクトのテーマは「先生が先生を支援できる仕組み、先生が副収入を得られる仕組みを構築する」。自身が教員でもあるチームメンバーたちは、「先生たちが自信を持って、いきいきと働けるような世界をつくりたい」というビジョンをもっていて、議論をする中で、「先生たちが定時に帰れない」という課題に的を絞ることになりました。

担当した業務としては、まず水野さんから「先生の業務の洗い出しをしてみて」と役割を振ってもらい、チームメンバーである先生方に30分ずつの個別インタビューをしました。この中で、他のチームメンバーとも関係を築くことができました。その後は、プロジェクト進行管理業務を担当しました。先生方へのインタビュー終了後は、概ね週に5時間ぐらいの稼働でした。

自分のスキルで教育に貢献できることが見え始めた

ー 何を目標に参加していましたか?

HatchEduに参加して、最初に設定したゴールは「自分のスキルのどの部分が教育に貢献できるかを見つける」というものでした。

ミーティングごとに次のタスクを整理することや、資料をつくることなどは、会社では日常的に行っていることなので、先生たちから「すごい」「見やすい」と言っていただけたことは、驚きもしたし、嬉しいことでもありました。バックグラウンドが変わると、スキルの価値が変わるんですね。議事録をまとめて宿題を振ったこと、先生たちが作業しやすいように「ここだけ埋めてもらえれば」とワークシート形式でまとめたことなどが好評でした。

HatchEduの研修セッションの中でも、教育セクターは「仕組み化」があまりできておらず、ニーズがあると伺いました。「自分が今持っているスキルで、教育に貢献できそうだ」ということがクリアになり、前向きな気持ちになりました。

佐野さんがインタビューしてまとめた先生の業務

ー HatchEduメンターとの関わりから得たものは?

水野さん、綿谷さんとのミーティングは、毎回とても刺激的でした。起業家や戦略コンサルタントのものの見方、考え方、仕事の仕方に身近に触れることができたのは大きな収穫です。「サービスを立ち上げるときには熱い思いがないと成就しない」という起業家視点と、方向性をバシッと決めるコンサル的なマネジメントが交わる場でした。

また、HatchEduでは、教育分野で起業を経験しているメンターの皆さんの経験共有のセッションがありました。起業家の方々も同じ人間で、みなさん不安だったり勇気を出してチャレンジしたんだなということがわかり、私自身もチャレンジしようと思えるようになりました。

ー HatchEduで特に楽しかったのはどんなことでしょうか?

楽しかったのは先生たちとお話できたことです。先生たちのおかれている現状、今の学校現場のリアルを知ることができました。そして、こういうところに参加されている先生方なので、皆さん意識も高くて、自分たちの仕事を前向きに捉えていらっしゃいます。

来年、娘が小学校に入るのですが、「こういう先生方がいるんだ」と勇気づけられました。教師は素敵な仕事だと今も思っていますが、私の今のキャリアのステージでは、これから教師として飛び込むにはちょっと遅い、でも、今は子どもの成長とともに教育セクターに関われることが楽しみになりました。

価値観やキャリアビジョンも明確に

ー 参加を考えている方へのアドバイスをお願いします

一歩踏み出すと景色が違ってくるので迷っていたら行動したほうがいいと思います。
私自身は、プロジェクトの参加だけでなく、起業家の方から話を聞く講座やキャリアセッションを通して、自分なりの教育への関わり方ややりたいことが見えてきました。特に、キャリアセッションは、グループワークを通してキャリアの棚卸しをし、自分が大事にしたいことを改めて把握できたのがすごくよかったです。

私の場合、教育業界に参加したいと思っていたけれど、実は「サービスをつくってみたい」という思いが強いのだということをキャリアセッションで再発見しました。グループワークで口から出てきたのは「ホームスクーリング」や「小中学生」という言葉でした。今は積極的不登校の子もいます。私の娘もこれから小学校で、もし嫌なことがあったとしたら「学校行かなくていいよ」というだろうなとか、通信環境やデバイスも進化して教育環境は大きく変わるだろう…そう考えていくと、学校の価値を再定義したいと心の底で思っていたのかな、ということが大きな発見でした。

ー 今後、教育セクターでのキャリアをどう考えていますか?

HatchEduに参加して、「教育に関わりたい」というもやっとした気持ちが形を帯びて、教育にどう関わっていきたいかがクリアになったことがいちばんの成果だと思っています。

今回、チームの先生たちと話していて、教壇に立つことが本当に自分のしたいことではないということに気づきました。「教える」というより「人の成長をみる」のが好き、また、教室の30−40人に深く働きかけるより、もう少し広い人に対して何かしたい、レバレッジをかけたいという自分の志向性を再確認できました。「教育セクターでは、プロジェクト・マネジメントや仕組み化のスキルに対するニーズが強い」ということを知ることができたので、また今の自分の本業の中で培うことが可能なスキルについても改めて発見することができましたし、もう少し伸ばせそうなところも見えてきました。今は色々な働き方ができるようになってきているので、転職せずとも、いろいろな関わり方があります。今後は、プロボノとしてゆるやかに教育セクターに貢献できればと思っています。

教育セクターのキャリア、ということではないかもしれませんが、教育への関わり方として「良い親になろう」と思うようにもなりました。プロジェクトを通して先生が、保護者からの電話に対応しているうちに定時に帰れなくなるといった実態を知りました。仕事と同じように短い時間で伝える、だらだら話さないなど、先生にとってよい保護者、サポーターでありたいと思っています。

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文:江森 真矢子
取材協力:升野 頌子

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