自分の軸を大切にしつつ事業化準備ができる、あたたかい鍛錬の場

髙島 崚輔さん(HatchEdu – 2020参加者)

HatchEduは、教育で起業したい&教育をプロボノ支援したい人が集まるコミュニティとして、2020年からスタートしました。1期プログラムの参加者はHatchEduから何を得たのでしょうか?

今回は、教育領域での起業の種を支援するコース(Aコース)に参加した、米国ハーバード大学4年生の髙島 崚輔さんにお話を伺いました。髙島さんは、関西の私立高校から東京大学を経てハーバード大学に進学。ハーバードでエネルギー工学を学ぶ傍ら、特定非営利活動法人(NPO)「留学フェローシップ」の代表理事としても精力的に活動しています。

プロフィール
名前:髙島 崚輔
職業・所属:ハーバード大学4年生 エネルギー工学専攻
仕事のスタイル:「思いついたことをやってみよう」「おもしろいと思ったことに飛び込んでみよう」
先生をするなら: 小学校の教員(人格形成にとってインパクトのある時期だから)
学校をつくるなら: 大学(目的意識をもって自分で好きな学問を組み合わせて学び,活かすところまでできるような)
好きなミュージカル:「ビリー・エリオット」「スクール・オブ・ロック」(主体的な進路選択・学びのデザインといえばこれだと思います笑)

Contents

全国の高校生と出会って見つけたプロジェクトの種

ー HatchEduに応募された動機を教えて下さい。

HatchEduの募集が開始された頃は、ちょうど新型コロナウィルスの影響でアメリカに帰ることができず、卒業を1年延ばしてNPO(留学フェローシップ)をメインに教育分野で活動していこうと考えていた時期でした。
NPOの活動では、高校生の海外大学進学や主体的な進路選択を支援しており、北海道から沖縄まで、全国の高校を回って数千人の高校生と出会ってきましたが、出会った高校生の多くは日本の大学に進学し、そして大学での自分の学びに満足していないという現状を目の当たりにしてきました。そこで、日本の大学での学びを変えるようなプロジェクトをしてみたいと思ったのがHatchEduへの応募の動機です。

ー すでに教育セクターでのネットワークもある中で、HatchEduに魅力を感じたのはなぜですか?

HatchEduの「教育プログラムぽくない」ところが面白いと思いました。「あなたはどういう教育を目指しているんですか?」「あなたの教育観は?」と聞かれ続けるようなプログラムではなく、かといって、「スタートアップとは」「ビジネスモデルとは」といった起業系コンテンツばかりでもない。
HatchEduは、教育分野で自分が大事にしたいことを追求しつつも、それをどのように事業化し、持続可能なプロジェクトにしていくかというところまで含めて考えられるプログラムなのかなと。採算の取れるスタートアップとしては芽吹くかどうかわからないチャレンジも応援してくれるけれども、教育の理想論を語るだけでもない。そういう意味で、バランスがよいプログラムだと思います。
また、応募に際して参加したイベントでも、教育に対していろいろな関わり方をしている方が登壇していて、その多様性が面白いと感じました。

ー HatchEduではどんなプロジェクトに取り組みましたか?

中高生が自分の学びをデザインするためのプログラムづくりを行いました。

もともと「日本の大学を変えるようなプロジェクトをしたい」というのがHatchEduへの応募動機でしたが、大学での学びが抱える課題を深掘りしていく中で、高校時点での進路選択や、その手前の文理選択の時点で課題があるんじゃないかと気づいたんです。だからこそ、高校1年生で学問の魅力や価値に気づき、それを文理選択や進路決定に活かせるよう支援したいと立案しています。特に米国大学の場合は入学後に授業を取りながら専攻を決定できるので,学問と自分自身のフィットについての感度が高い学生が多い。海外大学生のメンタリングを通して、「学問っておもしろいな」「この学問なら学んでみたい!」と感じるきっかけになれば嬉しいです。

HatchEduのAコースでは、期間内にMVP(Minimal Viable Product = 必要最低限の機能に特化した製品・サービスのプロトタイプ)を始めることが推奨されていましたので、3ヶ月のプログラムが終わる頃から徳島県の高校で実証実験を始めています。その後もプログラムを修正しながら実証を重ね、2021年度から本格的に始動予定です。

まず課題から考える、そして課題に挑み続ける

ー HatchEduに参加して、どんなことがいちばんよかったですか?

やはりメンタリング・プログラムです。メンターの方が素晴らしかったですし、1対1ではなく、同じメンターを共有する他の参加者と一緒にメンタリングを受けるという構造もよかった。定期的なメンタリングの機会がよいペースメーカーにもなり、「ここは根本的にどうなの?」と突っ込まれ、検証し改善していくというサイクルを繰り返しながら、3ヶ月の中で自分がわかりやすく成長している感覚、前に進んでいる感覚をもつことができました。

また、メンタリングを受ける中で、自分の中の常識が少しずつつくりかえられたというのも面白い体験でした。具体的には、「課題から考えよう」「手段にはこだわるな」ということを100回くらい言われたんです(笑)。こちらは「何かをやりたい」と思ってHatchEduに参加しているわけですから、当然、手段=解決策のアイデアには思い入れがあったのですが、そうではなく「まず課題から考える」ということを叩き込まれ、自分の思考基盤をつくりかえることができたことが本当にありがたかったです。

また、メンターの方以外でも、教育のスペシャリストの方々がコミュニティの中にいて、Slackで論文や記事、情報などがたくさん共有されたり、相談にのってもらえたりしたこともありがたかったです。

ー 研修セッションについてはいかがでしたか?

とても印象に残っているセッションが3つあります。
ひとつは、Learning for All(LFA)の李さんが、LFAの事業を継承してからのマネジメント経験についてお話してくださったセッション。李さんの「課題に挑み続ける」という覚悟や気概から多くのことを学びました。あのレベルで覚悟を持ってやっているからこそうまくいくのだろうと。自分でもNPOのマネジメントをしている経験があるからこそ、特に李さんの覚悟のすごさを実感できたのかもしれません。

プログラムの序盤に行われたHLABの小林亮介さんによるインパクトベンチャーについての研修では、資金調達の話、特に「長期的に何を達成するために、事業の1−2年目に誰にどのくらいお金を出していただくのかを考えるべき」という話がものすごく勉強になりました。

プログラムの終盤に行われたキャリアセッションでは、ロジカルに課題を詰め続けた3ヶ月の最後に自分のゴールに立ち戻り、「自分にとっての超理想のキャリアって何だろう」ということを発散的に考えることができました。最後に自分の原点に立ち返ることでモチベーションを上げるプログラム全体の構造もよかったですね。

試行錯誤の『試』はたくさんあってもいい

ー HatchEduのコミュニティについてはいかがでしたか?

「あたたかい鍛錬の場」であるこのコミュニティこそが、HatchEduの魅力なのだと思います。先ほどお話したメンターのみなさんもそうですが、熱意を持った参加者のみなさんとご一緒できたことで、「僕も頑張らねば」という思いを日々抱いていました。

また、Aコースの参加者同士でお互いのMVPについてフィードバックし合う機会で、一足先にプロトタイプを開始している人から頂いたアドバイスも大変参考になりました。また、プログラムが終了してからも繋がり続けられる仲間、相談できる方々に出会うことができたのも魅力ですね。実は、プロジェクトのMVPの第二弾はHatchEduのコミュニティで出会った方の勤務校で実施させていただく予定です。

ー これからご自身のプロジェクトをどのように育てていきたいですか?また、今後のキャリアをどのように考えていますか?

3ヶ月のメンタリング、そしてその後のMVPの実践を通して、課題が見えてきたと同時に、このプログラムの社会的意義も実感することができました。今後もより多くの高校生のみなさんにさらに質の高いプログラムを届けられるよう、がんばります。

NPOの活動でも助成金のほか、寄付や謝礼を頂いていましたが、HatchEduではさらに、「価値に対する対価を得て事業を回す」ということについても学び、経験できたことが本当によかったと思っています。実現したいインパクトを出すためにどのようにお金を回していくのかというところも含め、まだまだチャレンジは山積みです。

実は、大学での専攻はエネルギー工学で、教育とは関係がないんです。自分の将来のキャリアについて悩むこともあったのですが、HatchEduのキャリアセッションを通じて、自分は本当に教育のフィールドでやっていることが大好きで、「教育軸」を捨てたくないんだなと実感できました。「キャリアは試行錯誤なので、『試』はたくさんあってもいいんじゃない?」と勇気づけられたことも印象的ですね。それに、Aコースの他の方は、本業がありながら本当に強い思いを持って事業を立ち上げようとされている方ばかりで、その姿に刺激を受けたからこそ、自分も思いきりやってみようと思うようになりました。

ー これから応募を考えている方へのアドバイスがあればお願いします。

Aコースの場合、能動性があって初めてフルに使いこなせるプログラムだと思います。僕の場合は、HatchEduだからこそ得られるものの中に僕が求めているものがあったので、能動的に楽しめたと思っています。まずは、自分が何を求めているかを客観的に分析した上で,いいなと思ったら飛び込んでみてください!「これはなんでだろう」という分析的思考と「とりあえずやってみよう」という行動のバランスを取ることが好きな人には、HatchEduはとても向いていると思います!お待ちしています!

メンターからのメッセージ

高島さんに「日本の大学に対する不満を解決したい」という原体験を持ってHatchEduに参加していただけたことは、HatchEduコミュニティにとっても良かったと思います。高島さんはアドバイスを吸収した上で自分の考えを短期間でアップデートしていくことのできる方でしたので、 メンタリングとしては「なぜその問題が生じているのか?」「誰が何の価値に支払うのか」といった客観的・マーケティング視点での質問を中心とし、高島さんご自身が探索しながらアイデアを膨らませていけるように心がけました。 3ヶ月の期間中にいろいろなアイデアを模索されていましたが、 「課題が存在している」だけでなく「持続的に解決可能である」領域を探し続けた結果、現在の事業案にたどり着いたのだと思います。教育は長期投資であり、事業として見ると受益者と支払者が異なります。私もメンタリングをしながら教育の事業の複雑さ・奥深さを味わうことができました。HatchEduは教育”事業”を支援しています。スタートアップではアップデートを続けることが大切ですので、高島さんにはこれからも積極的な行動を続けて、より良い教育事業を作っていただくことを期待しています。(メンター:綿谷健治)

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