HatchEduの「教育アクセラレーター」プログラムでは、教育団体を対象に成長加速支援を無償でご提供しています。
2022年の「教育アクセラレーター」参加団体である 一般社団法人Kids Code Club(キッズコードクラブ) の石川麻衣子さん(代表理事)、川添浩司さん、山本奈穂子さんに、HatchEduとの協働体験について振り返っていただきました。
◉石川麻衣子(いしかわ・まいこ)
代表理事・創設者。自らも経済的事情で学ぶことを諦めざるを得ず、独学でプログラミングスキルを学びウェブ制作会社を起業。テクノロジーの力で「生まれた環境に関わらず、好きなことを存分に学び、また自らも学び続けるきっかけが得られる社会づくりがしたい」と2016年にKids Code Clubを設立。
◉川添浩司(かわぞえ・こうじ)
理事・事務局長・共同創設者。営業/バックオフィス責任者。幼少期の原体験から、子どもの貧困問題に課題意識を持つ。IT業界で仕事をするなかで、プログラミングの力で貧困に苦しむ子どもたちの自己肯定感を高め、キャリアの選択肢を増やしたいと思い石川さんとともにKids Code Clubを設立。
◉山本奈穂子(やまもと・なおこ)
理事。システムエンジニアを経て、ウェブ制作の仕事をする傍ら、子育て支援をする活動に携わる。活動の中で、直接子どもを支援する活動をしたいと感じ、2017年からKids Code Clubに参画。デザインやコミュニティ設計・運営を担う。
Kids Code Clubのめざしていることや活動内容は前編をご覧ください。
—まずは、Kids Code ClubとHatchEduとの出会いから振り返りたいと思います。HatchEduが2021年に行った短期のインキュベーション・プログラムに石川さんが参加してくださったのがはじまりでしたね。
石川:実は、その直前にKids Code Clubは解散寸前の状態になっていたんです。自信のなさから資金集めに積極的になれず、かと言ってボランティアで続ける余裕もなくて、一度活動を見つめ直そう、と。そうしたなか、たまたまウェブで検索していたらHatchEduを見つけて、「教育領域で起業支援プログラムがあるんだ!」と驚き、最後の賭けのような感覚で応募しました。
—参加したことで得られたものはありますか?
石川:参加する前は、「子どもたちが希望を持って生きていけるように誰でもプログラミング教育が受けられるようにしたい」というふわっとしたビジョンだけがあって、誰にどうアプローチすればいいのか、そのために何が必要なのか、細かく考えられていませんでした。プログラムではそれを徹底的に言語化することが求められました。思いはあるのに、うまく言葉にできなくて、正直とても苦しかったです。
でも、考え抜いたおかげで、めざすゴールや道筋が見え、自分たちがやっていることの価値を説明できるようになりました。それによってチームが一致団結し、助成金に応募する自信もついて、採択されて活動資金を得られて……。組織も順調に拡大しました。
山本:ビジョンがしっかりと言語化されたことで、「一緒にやっていきたい」という気持ちがさらに強くなりました。石川が新しいことに果敢に挑戦して色々なものを吸収していって、それを見ていた私たちもパワーをもらえたと感じています。
石川:HatchEduでは何を言っても受け入れてもらえるという心理的安全性があります。みなさんすごく褒めてくださるので自信につながったし、自由に発想やアイデアを出すことができました。それが良い結果につながったのかな、と思います。
—インキュベーション・プログラムの最終プレゼンテーションでは、石川さんのプレゼンがビジョナリー賞(参加者が選ぶ賞)を受賞されましたね。Kids Code Clubのビジョンに私たちも共感しましたし、社会に必要なチャレンジだという確信を得て、「今度は教育アクセラレーター・プログラムで、より長期の協働をさせていただけませんか」という提案をしました。
石川:ご提案いただく前に一度、HatchEduスタッフのお二人とメンターであるLearning for All代表理事の李炯植さんが福岡まで来てくださって、私たちも3人でお会いしたんですよね。李さんからは、Learning for Allの事業拡大の軌跡について非常に詳しく教えていただき、貴重な機会でした。
川添:「石川が頑張って得てくれたチャンスを活かさなければ」と思いました。僕と山本も一緒にお会いしたことで、それまで石川がひとりで背負っていたものを一緒に背負えるようになった感覚がありましたね。
—教育アクセラレーター・プログラムが始まって半年が過ぎましたが、いかがですか?
川添:初期の頃は課題を進めて週に一度ミーティングで進捗を報告する流れでしたが、通常業務に追われて手をつけられないことが続き、「せっかく時間をいただいているのに何も進んでいない、どうしよう」と申し訳なさでいっぱいでした。でも、HatchEduの皆さんはすぐにそれを察して、「ミーティングはいま考えていることを話す場にしましょう」と提案してくださったんですよね。
それによって本当に心が軽くなりましたし、うまく言葉にできない思いを語るとミーティングが終わる頃にはわかりやすい文章にまとめてくださったり、図表を交えた資料に落とし込んでくださったりして「(伝えたかったことは)まさにそれです!」という言葉を200回くらい口にした気がします。
山本:毎週のミーティングのほかに、必要があるときは個別のミーティングも設定してくださいました。お互いに考えていることを共有・相談する時間はすごく大事なんだなと改めて感じましたし、組織として物事を進めていくスピード感が身についたと思います。
石川:財務や広報など分野を絞って支援してくださる団体はほかにもあるかもしれませんが、HatchEduのように私たちの歩みに寄り添い、その都度必要なサポートを柔軟に提案してくださる団体はほかにないのではないでしょうか。一緒に良い結果を出していこう、という強い覚悟のようなものを感じました。メンタリングもそのとき求めていることについて深く知っている方をご紹介してくださったので、とてもありがたかったです。
協働がはじまってからこの数か月で、Kids Code Clubは3年分くらいの成長をしたんじゃないかと感じています。有給スタッフもボランティアも理事もプロボノも増えて、事業計画をガンガン立てていって……自分たちだけでは考えられないスピードで物事が進み、それに伴う困難にも一緒に向き合っていただきました。
協働が終わった後もさまざまな困難が待ち受けていると思いますが、ひととおり、いろいろなやり方を学ばせていただいたので、「あのときはこんなふうに乗り越えたな」と思い出して立ち向かおうと思います。
—事業計画づくりやプログラムの見直し、カリキュラム開発の基礎研修、プロボノ募集などさまざまな活動をご一緒させていただきました。特に印象に残っているものはありますか?
石川:教教育関係者の方に放課後プログラミングクラブの観察をしていただいたことです。以前から、「自分たちがつくっている場が本当に価値のあるものになっているか専門家の方から客観的に判断してもらいたい、改善点があれば指摘してほしい」と思っていたんです。でも、私たちは教育業界の人間ではないので、ツテが何もなくて。教育領域で豊富な経験を持っている方々に見ていただけたのは、HatchEduのネットワークがあったからこそ。そこでポジティブなフィードバックをいただけたことが自信につながりましたし、具体的なアドバイスも参考になりました。
—見学された教育者の方からは、「学校ではないサードプレイスだからこその良さがあるから、そこを活かしてはどうか」といった声が寄せられていましたね。他者から見た強みを自覚することは、組織を大きくしていく上でとても大事なことだと思います。
石川:本当にそうですね。もうひとつ、資金調達のサポートもとてもありがたかったです。長年、NPOで資金調達に関わっている経験豊富な方からメンタリングしていただき、資金計画の基本的な考え方やいまの私たちのフェーズでもできることを丁寧に教えていただきました。
NPOの資金調達に関する具体的な情報はあまり外に出てこないので、これまでは手探りで進めるしかなくフィードバックをいただく機会もほとんどなかったのですが、募集要項の読み解き方や申請書の組み立て方、言葉の選び方、プレゼン・質疑応答のやり方まで、ハンズオンで一緒に考えながら取り組んでいただけたので、ぐっと理解が深まりました。この感覚を忘れないうちに自分たちで再現できるよう、そして、見えてきた課題を解決するために新たな外部資金の申請に向けて継続的に取り組みました。
その結果、経済産業省「未来の教室」実証事業や日本財団の助成金などにも採択されました。
—10月からは3か月間、HatchEduを通して6名の方にプロボノとして関わっていただきました。
川添:これまでだったら「優秀な経歴やスキルを持った方にプロボノをしていただくなんて」と恐縮していたと思いますが、応募者のみなさんの「子どもたちに機会を提供したい」という思いが伝わってきたので、遠慮せずお力を借りすることができました。その結果、複数のプロジェクトを前進させることができ、また当初の予定期間終了後にも継続して関わっていただいており、嬉しく思っています。
石川:受益者からお金をいただかないビジネスモデルを維持しつつ規模拡大を志向する以上、無償で団体に関わってくださる方の存在はとても貴重です。自分たちの文化を守りながらさまざまなプロの方の力を貸していただくノウハウやマインドセットを学ぶことができたので、引き続きみなさんと良い関係を築いていけたらと思っています。
山本:プロボノの方にも「参加して良かった、得るものがあった」と感じていただけるようにしたいですね。子どもも保護者も含め関わる人たち全員が居心地のいいコミュニティにしていきたいです。
—HatchEduでは今後も子どもたちの可能性を広げる教育事業に取り組む団体に向けて、アクセラレーション支援を行っていく予定です。ご経験を踏まえて、どういった団体におすすめできるプログラムだと感じましたか?
石川:「自分たちがどんな社会をめざしているのか」がクリアになっている団体。そして、変化を受け入れられる団体ですね。多くの機会をいただきとてつもないスピードで組織が変化していくので、それを楽しめる方におすすめしたいです。
川添:もし、この時期にHatchEduさんの伴走がなかったら、と考えると血の気が引きます。それくらい、私にとっては大切な時間でした。検討されている団体の方には、「どんなパスを出しても、しっかり受け止めてもらえるので、心配せずに飛び込んでください」とお伝えしたいです。
山本:重い荷物を持ってあっちこっちフラフラとさまよっていた私たちに、HatchEduのみなさんは「ちょっと待って、一度荷物を整理しましょう」と声をかけて、どの道を進むべきか一緒に見定め、途中まで荷物を半分持って歩んでくれた。そしていま、私たちは自信を持って目の前の道に踏み出していこうとしている。この数か月って、私の中ではそんなイメージです。
いろんな思いがあるからこそうまく言葉にできなかったり、どっちに進んでいいかわからなくなったりするんですよね。HatchEduのみなさんはそこを整理してくださるので、何かを成し遂げたいという強い思いのある方なら誰にでもおすすめしたいです。
石川:聞いていて映像が浮かんできました。本当にそのとおりですね。この数か月でたくさんの成功体験や自信を積み重ねさせてもらったので、挫けそうになったときも頑張れる気がします。これからも、夢を大きく持って進んでいきたいと思います。
【HatchEduの教育アクセラレーター・プログラムについて】
構成・編集:飛田 恵美子
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